(前巻のつづき)
気がついてみたら、十字架みたいだったアンデルセンが地上に降り立ち、銃剣でいよいよアーカードの心臓をえぐろうとしているところを、間一髪セラスが割って入ったのですが、彼女まで茨と炎に呑み込まれそうになります。「いよいよ旦那鬼籍入りか?」というところでセラスの呼ぶ声に、アーカードは意識を取り戻します。
「五月蝿いぞ 婦警!!」
それは、過去の回想を経て、500年前の彼でもなく、100年前の彼でもなく、今現在の彼(=アーカード)に立ち返った事を示しています。
「おまえに倒されても良かった…(中略)523年前のあの日なら あの日なら」「でももう もはやだめだ」
ここで言う「あの日」はおそらくヴラド3世が「人でなし」になった日。史実に則るならヴラド3世の没年1476年を示すと思われるのですが、そうなるとこのHELLSINGは1999年を舞台にしているという事なのでしょうか。だとすると、1巻第一話の日付と齟齬が生じてしまいますが、もうそこはいいやっ!(爆)
そしてついに、銃剣を破壊しながらこれまでにも何度か登場した、ルール「化け物を倒すのはいつだって人間だ 人間でなくてはいけないのだ!!」と告げ、アンデルセンの懐に斬り込んで、その心の臓腑をむしり取り、握りつぶしてとどめを刺します。
この時インテグラは、先代の言葉を思い出しているわけですが、あのアーカードが「弱々しく泣き伏せる童に見える」アーサーの境地ってスゴいですよね。
さすが「人間」です。そんなアーサーだったから、封印されていたにもかかわらず1巻第2話で描かれているように、アーサーに対して死後にあっても敬語をつかっていたのかもしれません。
そもそもあの「封印」は、アーサーからアーカードへの「未来への約束」であって、両者の合意の元に行われていたような気さえしてきます。
一方このときアーカードは「おまえはおれだ!!」「俺もこの通りの様だったんだ」と心情を吐露します。
いつもでかい態度のアーカードの「涙」のシーンはその場にいた全員が胸を打たれた様子。
そして胸をえぐられた神父は、その人格を取り戻したのか、「鬼が泣くなよ 童に追われたか」とアーカードに声をかけたところで、ひとまずおしまい。
実はアーカードが一人称に「おれ(俺)」を使う場面はかなり限られています。大抵は「わたし(私)」なので、このラスト場面はより印象的になってます。
「俺」は、1巻第1話や4巻第1話ラストでちらとみえますが、今回の対アンデルセン戦での頻度は突出しています。
「俺」を口にするときが、普段の余裕たっぷり態度デカデカ旦那が「素」をちらと見せたときとするならば、アーカードにとってこの戦いが特別なものだったと言う証かもしれません。